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告発\金沢地方検察庁\最高検察庁\法務省\石川県警察御中
弁護士と裁判官が共同で確定させた傷害・準強姦被告事件判決の再捜査要請に係る石川県警察珠洲警察署提出書面の情報公開

殺人未遂事件幇助の被告訴人: 木梨松嗣弁護士(金沢弁護士会)、岡田進弁護士(金沢弁護士会)、長谷川紘之弁護士(金沢弁護士会)、若杉幸平弁護士(金沢弁護士会)
名誉毀損罪の被告訴人: モトケンこと矢部善朗弁護士(京都弁護士会)、小倉秀夫弁護士(東京弁護士会)
市場急配センター株式会社 石川県金沢市駅西本町5丁目10番20所在
作成管理者: 石川県鳳珠郡能登町字宇出津 廣野秀樹
金沢地方検察庁御中

2021年5月14日金曜日

#### 被害者女性の供述を否定し強制わいせつ事件で逆転無罪判決とした名古屋高裁金沢支部,濱田武律裁判長の判決文に対する大きな歴史的疑問

#### 被害者女性の供述を否定し強制わいせつ事件で逆転無罪判決とした名古屋高裁金沢支部,濱田武律裁判長の判決文に対する大きな歴史的疑問

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:CATEGORIES: @kanazawabengosi #金沢弁護士会 @JFBAsns 日本弁護士連合会(日弁連) #法務省 @MOJ_HOUMU #梨木作次郎弁護士

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(1) H証言自体に内在する問題点について

そこでまずは、H証言自体に内在する問題点を取り上げてみるのに、以下に示すような各点を挙げることができる。

(ア) Hが最初に抱きつかれたとする地点について

H証言では、被告人から最初に襲われた地点の特定について様々な供述をし、結局は、H実況見分(昭和六三年一二月一四日実施)の際に指示した「ナカヤビル」前の点(前記歩道橋の下り階段下から約四〇メートル)を正確な箇所といっているものと理解されるのであるが、その証言中では、他に、「(階段を)下りてしばらく歩いたら」「一〇〇メートルも歩いたか、歩かないか」「一〇〇メートルというのは歩き過ぎですけど、歩数で言えば一五歩くらいと思う」(第五回公判)とか、「(階段を)下りてすぐだった、まだそんなに歩いていない記憶」「(実況見分で立ち会って指示した地点は)この辺りというのが周りから何となく分かる」「階段からガード下入口辺りまでの中間くらいだった」「(ガード寄りでなく)まだ階段寄りだったと思う」(第六回公判)とか供述していて、その地点の特定は甚だ心許なく、特に距離の表現においては一〇〇メートルと一五歩という常識はずれの食い違い供述をしている点など誠に不自然で、これを単なる記憶の混乱や距離感覚のズレということで済ますことができるものか首を傾げざるを得ないのである。

この点原判決は、当時の被告人の犯行態様に対するH証言の不確かさも含め、深夜突然見ず知らずの男から襲われたのであるから、その際の正確な状況の再現を求めること自体に無理があるとの理解を示すのであるが、深夜一人歩きの途中に痴漢に襲われるという特異な体験をした女性が、最初に抱きつかれた地点という程度の比較的単純な事柄について、それほどに記憶が曖昧であるということは容易に肯きがたく、それでもそれが事実というのなら、証言は、漠然としたままの答えにとどめておけばいいものを、相互に矛盾するようなあれこれの供述をして帰一しないというのはやはり不自然というほかなく、かりに、Hが本件被害時の記憶に自信がなかったとしても、証言は、同女が実況見分に立ち会って現場においてその地点を既に指示して確定したのちのことであってみると、当該地点がそこであることをはっきり供述することができないはずはないのであって、にもかかわらず前記のように供述が混乱する理由を原判決のような理解で追認するわけにはいかない。

これをHの捜査段階での供述によって確かめてみると、「歩道橋を渡り終えて一〇歩と歩かない内に」(一二月八日付員面)と述べてわざわざ階段を下りてすぐの地点を図示し(同調書添付)、同じく「一〇歩も歩くか歩かない内に」(一二月九日付員面)と述べる一方で同調書の中でそれよりはるか前方の「ナカヤビル」前をその地点と指示し(添付住宅地図)、検察官の取調に至っては「さきに一〇歩も歩かない内にと供述したのは、私の感じで話したのであり、(実際は)歩道橋を渡り終えて少し歩いた時で、現場で警察の人に説明した場所が正確である」旨(一二月一四日付検面)供述が変化しているのであるが、これら供述内容を前記H証言と対比するときは、供述全体の矛盾は更に広がるのであり、とくに、まさに被害直後の捜査官に対する取調では、歩道橋を下りて一〇歩も行かないすぐにと説明していた最初の被害地点を、のちに三〇メートル以上も前方の「ナカヤビル」前と言い直したその供述の変遷は、理由が薄弱で直ちには納得できない。

結局、このように最初に被告人から抱きつかれたという地点の特定に関するHの供述が混乱し、かつ変遷するというのは、同女が正確にその地点を記憶していないのではないかという疑いを抱かせるだけで済まず、歩道橋下り口から本件ガード入口付近までの間で同女が被告人に後ろから抱きつかれるという実体験をしたこと自体にも疑念を投げかける状況と捉えることも可能である。

なお、原審及び当審における各現場の検証結果によれば、Hが最初に被告人から襲われたと供述する前記「ナカヤビル」前の点付近は、街灯やビルの玄関灯などで相当に明るく、しかも同ビルは住宅兼用建物でもあったということで、そもそも通行中の女性にわいせつ行為に及ぼうとして襲いかかる場所として相応しいところとは思えず、現に被告人は、その地点からは約三五メートルも先の暗いガード下にまでHを連れ込んでから初めてわいせつ行為に及んだというものであって、そこに至るまでの間は同女の身体に対していかがわしい所業に出ることはなかったというのであるから、それなら何のためにそのような地点で早々の犯行に着手する必要があったのか、犯人心理をいろいろ忖度して状況を推理してみてもその合理的理由を見出すのは困難であり疑惑は一層高まるのである。

(イ) 本件被害をHが予見できなかったという点について

H証言によれば、同女は、当時痴漢が出るという噂があるのを知りながら本件現場付近道路を深夜初めて一人で通行中いきなり背後から被告人に襲われたと供述する一方で、その際抱きつかれるまで人が近づいて来ることには全く気が付かなかったと述べ、そのことは同女の捜査段階からの言い分としても一貫しているのであるが、同女が供述する被害状況に即して容易に信じがたいことである。

すなわち、Hは、前記歩道橋の手前の路傍に停車中の乗用車内に男が座っているのを見たのち、付近に痴漢が出没する噂を聞いていたこともあって気になり、歩道橋の階段を上がる前には後ろを振り返って用心もしたというのであるから、当然神経は後方にも向けられて歩行していたと考えられるところ、もし、Hが証言するように、歩道橋を下りて四〇メートル先の前記「ナカヤビル」前で被告人に襲われたのが事実とすれば、乗用車内にいたという被告人はHに倍する早さの小走り歩調で追いかけて来なければ追いつけない計算になり、そのときには、当時サンダル履きであったという被告人が接近してくる足音がHの耳に入らないはずはないのであって(当審検証によって確認済み)、果たしてHに気付かれないように密かに近づいてきた被告人が歩道橋下り口から約四〇メートルも先の点でいきなりHに襲いかかるといった事態が実際にあったのか疑問を抱かされるのもやむを得まい。

(ウ) 被告人の抱きつき方等について

Hが被告人から抱きつかれた態様等について、H証言は、最初は、被告人の右手は同女の右肩からみぞおち辺りに、左手は同女の左肘を上から押さえ込むようにして抱きかかえ、やがては左手が同女の左脇に移って胴を抱えるような形にはなったものの、その両手が同女の体の前で組まれることはなかったこと、被告人はそのようにHを抱いたまま後ろから押すようにして黙って前方に進んだが、その間同女の乳房を掴むなどわいせつ行為には及んでおらず、その不安も感じなかったことなどと供述しているが、これは強制わいせつを目的とした犯人の行為としては極めて不自然なものといわなければならない。

すなわち、結局は、そこから約三五メートルも先の暗がりのガード下に至って初めてわいせつ行為をするつもりであったとみられる男が、相手女性に騒がれたり、暴れて逃げられたり、あるいは通行人や近所の住民に咎められて捕まったりするおそれもある明るい道路上でいち早く犯行に着手することの不可解さもさることながら、それでもあえて行為に出るというのなら、相手を取り逃がさないように後ろからその両手をしっかり羽交い締めにするとか、自分の手を前で組み合わせるとかして確実にその自由を制圧しようとするのが当然と思われるのに、H証言がいう程度の抱きつき方では、相手が本気になって抵抗した場合、果たしてその逃走を防ぐに足るものか甚だ疑わしいからである。

(この点、原判決は、弁護人側の行った犯行再実験による被害者の脱出可能とする結論に対し、当時の条件を同じように設定することは困難であるとしてその証拠価値を否定するのであるが、確かにそのときの被害者の驚愕や畏怖心など心理的要因まで加えた厳格な意味での状況再現はむずかしいとはいえようが、犯人側の行動を予測するに当たりその将来の可能性を知る限りの資料としてなら、被害者が全力で犯人の手を逃れようとしたときという前提での実験も決して無意味なものとはいえない。)

ところで、以上の本件犯行態様等につき、捜査段階におけるHの供述をみてみると、前記証言内容とは実質的に大きな違いがあることが分かる。

つまり、被害当日である昭和六三年一二月八日付員面では、「(犯人は)両手で私の体を羽交い締めにした」「羽交い締めの状態のまま暗い本件ガード下まで引きずって行った」「陸橋の下で羽交い締めにしていた右手を私の右肩に持ってきて左手は羽交い締めの状態」と、翌九日付員面(告訴調書)では、「後ろから抱きつき、服の上から私の両方のおっぱいをギュッと掴んできた、胸が痛かった」「いつの間にか、犯人の手は、右手は私の右肩から胸、左手は左脇腹から胸という恰好になった」とそれぞれ述べたのち、同月一四日実施されたH実況見分に立ち会って指示説明したのち、当日の検察官の取調(同日付検面)において、「男は私の後ろから抱きついて手を私の胸のあたりに回していた。警察で私の体を羽交い締めにしたと言ったのは、今日説明したように後ろから両手で抱きついてきたという状況を説明したもの」と供述するところ、そこでいう今日の説明という内容をその実況見分調書(同月二六日作成)添付の写真五葉目によって確かめてみると、犯人がHの両上腕部あたりを後ろから両手で抱え込むような情景が写されているのであって、してみると、検面供述は、羽交い締めというのでなければ、H証言がいう抱きつき方でもない態様に訂正されていると見ざるを得ないことになるが、これら捜査段階でのHの供述は、相互にも大きく変遷し、そのいずれもが原審証言と実質的に軽視できない違いがあることは明らかである。

H証言では、H自身「羽交い締め」というのがどんなものか知らず、警察での取調のときには自分からはそのような表現はしていない旨説明し、前記検面調書でもその趣旨の釈明をしていることになるが、各員面調書の取調官がHが供述もしないことを勝手に調書化したり、「羽交い締め」の意味を誤解して記述したりしたとは、それら供述内容がその後の抱き方の変化にも触れていることからしても信じがたいところであって、検面調書において、起訴(昭和六三年一二月一八日)後一週間以上も経てから作成された前記実況見分調書の写真描写を遡って引用した恰好の供述が、真相を語ったものとも考えられない。

要するに、Hは、本件事件直後及びその翌日には、捜査官に対し、被告人から最初は羽交い締めの状態で体の自由を制約され、しかもすぐその場で両方の乳房をきつく掴まれたというわいせつ被害までも申告しておきながら、のちにこれを撤回し、原審証言では、前述のとおり、およそ強制わいせつ犯人の犯行としては状況的に不自然不合理といわざるを得ないような態様の説明に後退しているとみられるのであって、もし後者の証言が事実とするなら、事件直後における前者の供述は、当然虚偽もしくは過剰な被害申告といわざるを得ないことになるが、Hの口からそのような供述変遷についての納得がいく理由をついに聞くことはできない。

H証言中、被告人から最初に抱きつかれた際の態様については、先に指摘したとおり捜査段階供述とも大きな相違があり、事実被告人からいうような襲われ方をしたのか多分に疑問があるものといわざるを得ない。

(原判決は、H証言とその捜査段階供述とは、大綱において供述内容が一致していて信用するに足るものとするようだが、以上に検討したような重要な事実関係の矛盾に言及しないで、他の大筋が合致することのみで信用性の保証があるとすることはできない。)

(エ) 連行方法やこれに対するHの対応等について

H証言による被告人の犯行態様が、最初の襲撃地点の地理的条件や抱きつき方において強制わいせつ犯人の行為として不自然と思える点があることは前述のとおりであるが、更に、Hを本件ガード入口方向へ連行する方法につき、羽交い締めもせず、かつ両手をHの体の前で組むということもしないまま、ただ押すように前方に進み、Hも前に逃げようとしていたため二人はもつれる様なこともなく、小走りといった感じで同ガード入口あたりまで移動した旨述べている部分も、強制わいせつを目的とする犯人の行為として何ら切実感を伴わない事実経緯であって、その際の犯人が真剣に相手女性を逃がさないようしっかり身柄を確保する制圧手段に出ていたものか疑問である。

そして、このような被害に遇ったというHは、その難を免れるため本能的にでも相当の抵抗を行うはずであるのに、H証言が述べるその際の同女の対応というのは、およそ抵抗と呼ぶには程遠い行為にとどまっているばかりでなく、同女自身が必死の抵抗をしたこと自体を言いはばかっているようにさえ見えるのが奇妙である。

すなわち、前記「ナカヤビル」前付近で突然後ろから被告人に抱きかかえられたというHは、とっさに痴漢に襲われたものと直感し、「キャー」とか「助けて」とか大声で叫びながら、掴んでいる犯人の手を解こうとして自分の手を伸ばしたり、右手に持っていたカバンを一応振り回したりしたが駄目で、とにかく明るいところへ行こうと思って必死に前に進んだが、犯人の方もちょうど押してくる感じで二人はそのまま前方に進み犯人の手は解けなかった、というのであるが、そこで述べられているHの対応振りが、深夜一人通行中の女性が痴漢に襲われて必死に難を免れようと抵抗している場面のものと眺めて極めて現実味に乏しいことは説明の要を見ないほどである。

普通女性が当夜のHと同じ被害に出くわしたとしたならば、まずは我が身を守るため、本能的、反射的にも犯人の手を振り払って逃げようとする行為に出るはずであり、そのときにはその手を掴んで引き外そうとし、あるいは身を捩って暴れ、場合によっては犯人の手を引っ掻いたり噛んだりもするなど必死の防御ないし抵抗を行うことが予想され、しかも、犯人の最初の抱きつき方というのが、前記のような甘い態様のものであったとしたら、被害者が女性とはいえ瞬発的に両手を拡げて前に駆け出すことで制縛を脱することが決して不可能とは思えず、少なくともその方法を試して当然と思えるのに、そのような行為には出ず、ただ手を前に伸ばしたり、持っていたカバンを手放しもしないで振り回すだけで、二人三脚よろしく犯人が女性の後ろから抱きついた状態のまま小走りで進んで行ったという犯行形態では、誠に間延びした悠長さが目立ち現実的迫真性がまるで感じられないのである。

この点をH証言で具体的にみてみると、例えば第六回公判で、当時どういう抵抗をしたかとの質問に対し、「一応、手をとにかく取ろうと思うんだけども、取れないというのかな、後はもう、押されるから、そんな抵抗どころじゃなくて、私も行かなきゃいけないと思うから、ある程度、鞄は振り回すけど、そっちのほうが、なんか二つ一緒にできないのかな、そっちのほう向かって歩いてた、必死で、もう歩いてたという感じです」と答えているが、これなどHがまともな抵抗をしていないことを自認したうえでの弁明とも受け取れそうな供述内容であって、中に必死とか暴れたとかの証言部分はあってもそれは内容空疎であり、宙に浮いたものといわざるを得ない。

当審におけるH証言によっても、以上の疑問点はより深まりこそしても、これを解消することはできないものである。

もっとも、一般的にいえば、後ろから突然男に抱きつかれるという被害に遇った女性が恐怖心のあまり萎縮して十分な抵抗ができなかったという場合がないわけではないが、本件当時のHの場合、痴漢が出るという噂を知りながら、当夜とくにその必要があったとも思えないのに初めてというその現場付近の夜道を一人で歩いていたものであるうえ、証言によれば、同女は、身長163.5センチと大柄で、剣道二段の腕前があるほか、学生時代から各種スポーツに親しんでいて体力に自信もあり、性格は自ら気丈であることを認めており、更に本件にあっては、被告人が逃げ出したのを「この野郎、なにするげ」「逃げるな、くそ」など女性にしては口汚いと思える言葉を吐きながら直ちに追跡し(告訴調書)、被告人を捕らえる際にはその頭を叩いたりもしたというのであって、そのようなHが畏怖心によって抵抗できなかったということは到底考えられないのである。

なお、Hの捜査段階供述では、「必死にもがき暴れた」(告訴調書)とか、「逃げようとしたが、男の力が強く、振り払うこともできず、ガード下の方へ引っ張り込まれた」(検面調書)とか述べている部分もあるが、いずれも抽象的な表現で具体的内容に欠け、これによってH証言の信用性を補完するに足るようなものではない。

(オ) とくに悲鳴の点について

Hが本件被害に遇ったときの対応として、犯人に抱きつかれた最初から犯人が逃走するまでの間、ずっと大声で悲鳴を上げ続けていたというH証言は、本件事実関係を究明するうえでとくに重要である。

証言では、Hは、前記「ナカヤビル」前の点で突然被告人に後ろから抱きつかれ、痴漢に襲われたと直感し、その場で「キャー」とか「助けて」とか大声で悲鳴を上げ、更にそこから抱きつかれたままの状態で押されるように前に進んで本件ガード入口付近に至ったのち暗いガード下に引きずり込まれてわいせつ行為に及ばれるまでの約三五メートルの間、ずっと悲鳴を上げ続けていたというのであるが、この事実は、捜査段階からも一貫してHが供述するところでもあり、また、当審における同女の改めての証言でもこれは変わらず、「人に気付いてもらおうと思ってかなりの大声で何回も悲鳴を上げ続け、一〇回前後は叫んだと思う」旨明言しているのである。

そしてもし、本件当時、H証言どおりに何回も悲鳴を上げ続けていたという事実が立証されるのであれば、同女が供述するような態様の本件犯行が実際に行われたことの有力な証左になるだろうし、それが逆に否定されるならばH証言の信用性が大きく減殺されることになるのはいうまでもない。

そこで検討するに、本件犯行があったとされる当夜「ナカヤビル」前付近から遠くない自宅で寝ていたというMの証人尋問調書によれば、同女はその時刻ころ寝つかれないまま布団に横たわっていたところ、「キャー」という女性特有の甲高い大きな悲鳴を一回聞き、何だろうなと思って耳を澄ましていたが再びは聞こえなかったというのであり、一方で、不審者として被告人を追尾していたというYの原審証言(第七回公判)でも同旨の供述がなされていたことからすると、Hが何回も悲鳴を上げ続けていたという証言の真実性は極めて怪しいものであり、当時Hが発した悲鳴は一回限りと認定するのが相当であろう。

原判決はこの点、Hはとっさの出来事で記憶が混乱して、抵抗した以上何回も大きな悲鳴を上げたはずと思い込んで証言したものと考えられ、事実はYが第八回公判で証言し直したとおり、悲鳴の大きなものは二回であったと認められると判断するのであるが、当審検証結果によって悲鳴が上げられたと推定される付近よりはせいぜい約三〇メートルと目測される近距離の自宅二階の寝室にいて悲鳴を聞き、その後も意識的に気をつけて耳を澄ましていたというM証言の証拠価値を否定する状況は何もなく、これに対し二回の悲鳴を聞いたというYの訂正証言は、本人自身の捜査段階から通じての過去の供述内容と対比しても措信することは困難である。

原判決の認定では、Hが悲鳴を上げ続けたというのは錯覚かも知れないとし、また、大きな悲鳴は二回だけとする反面で小さな悲鳴なら上げていたかも知れないと考える余地を残すことでH証言の信用性をカバーしているように見えるのであるが、助けを求めて人に気付いてもらおうと大声で悲鳴を上げ続けたという同証言に曖昧さはなく、これが誤信に基づいての供述とは考えられない。

となると、実際には一回に過ぎなかった悲鳴を、何回も叫び続けたと述べるH証言は、事実に反していることを知りながらことさらの主張をしている疑いが濃厚であり、これは、原判決がいうように、抵抗した以上は何回も悲鳴を上げたはずと思い込んだとみるよりか、同女が捜査段階から維持する本件被害状況に基づけば、犯人に抱きかかえられて相当距離を移動する間に一切抵抗をしなかったというわけにはいかず、そのときには当然悲鳴を上げ続けていたと説明せざるを得なかったという事情によるのではなかろうかと疑う方がより理に適ったものというべきである。

そして、当時の悲鳴が一回に限るものとすれば、それはHが最初に被告人から襲われたという「ナカヤビル」前付近とみるほかないのであるが、その場合には、それに引き続いて約三五メートルも被告人に体を抱えられてガード下まで連行されわいせつ行為に及ばれるまでの間、Hは終始無言のままでいたという常識上はあり得ない被害状況を想定しなければならないことになるのである。

そればかりでなく、更に当時被告人を追尾していて悲鳴を聞いたという前記Yの供述証拠及び当審の検証結果によって明らかにされた現場の地理的条件等を基にして、その一声の悲鳴が発せられた地点の位置を推量してみるのに、それはH証言がいう「ナカヤビル」前の点付近ではなく、本件ガード入口の点付近と認めるのが合理的と考えられ、この点に限っていえば、同点付近で初めてHとの関わり合いがあったという被告人弁解と符合するところである。

以上の検討からしても、本件犯行が「ナカヤビル」前の点で始まったとするH証言の信用性は大きく揺らぐものといわなければならない。

(カ) わいせつ行為及び転倒について

H証言では、要するに、被告人は同女を無理やり本件ガード下に引きずり込み、点付近で右手を同女のワンピースの首もとから入れてその左乳房を二、三回弄んだが、同女がよろめいて転んだとたん急に体を離してその場から逃走した旨を供述するのであるが、その供述内容は全体的に曖昧、不分明なきらいがあって安定せず、具体的とはいってもそれはかえって供述の混乱を示すものと見ることもできるなど、それ自体の信用性は決して高いものとはいいがたいところ、他の関係証拠や状況をみても、これを補強するどころか、かえって減殺する消極的事情さえ浮かび上がってくるのである。

まず、わいせつ行為についてのH証言をみれば、それまでHの体にいたずらをする気配など全くなかったという被告人が、本件ガード下に来て、急に右手をHの着衣の中に突っ込んできたというのであるが、その態様は、ガード下に引っ張り込まれて点に向かって移動している最中に手を入れられたもので、一応抵抗もしていたので簡単に入れられたわけではないという一方で、その手がいつ入ってきたか分からないくらいに入ってきたとも説明し、その後被告人に乳房を素手で二、三回揉まれるという女性にとって恥ずかしい行為に及ばれた間にHがそれを嫌がって必死に抵抗した様子を窺わせる供述は欠落しているのであって、これら証言が、強制わいせつ事犯の具体的状況の描写として甚だしく現実感に乏しいものであることはいうまでもなく、更にその時点での犯行を目撃したかのようにいうY証言が原、当審検証結果によって客観的に否定されることは後述のとおりであるし、右わいせつ行為を含めて被告人の犯行を窺わせるHの着衣や身体の損傷、痕跡もないことも証拠上明らかであって、これら事情もH証言の信用性についてマイナス評価を与えるものであることはいうまでもない。

ついで、転倒についての供述内容を探ってみると、H証言は結論的には転倒したと供述しているものとみざるを得ないのではあるが、個々の供述では、「その後私がこけそうになったんです。足がもつれたのか、とにかく転んだ。私が左手で地面を支え、仰向けにちょっと左傾く程度で転んだ。」(第五回公判)、「私はこけそうになった。倒れてしまいはしなかったけど、お尻はつかなかったけど、一応左手ついて倒れた。砂利の道に足がもつれたのか、倒されそうになったか分からない。何かに、先、足もつれて、倒れそうになったときに、ぱっと手が離れた。」(第六回公判)などと状況を説明するものであって、それらが本当に転倒事実をいうものかどうか甚だ不得要領のものであり、これまた心証に結び付かない。

これらの点についてのHの捜査段階での供述の経緯を調べてみると、当審で初めて取り調べた現行犯人逮捕手続書では、「この男がいきなり私に抱きついて来て、陸橋下に引き倒され、私の首から手を入れ胸を触った。」旨警察官に説明したとされ、事件当日のH員面では、「ワンピースの首の所から右手を入れて来て、左のオッパイを直接触わられた。」旨供述するものの、転倒の事実には触れておらず、翌日付の告訴調書では、「胸を触られたとき、倒れそうになったこともあった」旨述べているのに、一二月一四日実施のH実況見分での指示説明では、被告人に乳房を触られたと言いながら(着衣の中に手を入れられたとは述べてない)、転倒状態になった旨を供述した形跡はなく、当日付の検面調書でも、突然男が離れて行ったというのみで転倒事実の供述はみられないのであって、そのような供述経過に照らすと、果たして転倒という事実があったのか極めて疑わしく、それよりも、現行犯人逮捕時にHが「引き倒されて首から手を入れられて胸に触られた。」と述べたというのがもし事実なら、それは同女の他の供述とは完全に遊離した過剰な被害申告とみるほかないのであって、事件直後におけるそのようなHの供述姿勢は、本件におけるその供述全般の信用性にも大きく関わるものといわなければならない。
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- 名古屋高等裁判所金沢支部 平成2年(う)27号 判決 - 大判例 https://daihanrei.com/l/%E5%90%8D%E5%8F%A4%E5%B1%8B%E9%AB%98%E7%AD%89%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80%E9%87%91%E6%B2%A2%E6%94%AF%E9%83%A8%20%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%E5%B9%B4%EF%BC%88%E3%81%86%EF%BC%89%EF%BC%92%EF%BC%97%E5%8F%B7%20%E5%88%A4%E6%B1%BAn

 上記に判決文の「(1) H証言自体に内在する問題点について」という部分を引用しました。けっこうな分量の記述ですが,項目が(ア)から(カ)まで「(カ) わいせつ行為及び転倒について」のような見出し付きで細分化されています。

 被害者をなめくさり愚弄しているとも思える無罪判決を導く理屈が並んでいます。個々に見れば一応の理屈があるようにも見えなくはないですが,他の客観的に明らかな事実関係の骨格あるいは骨組みを軽視するもので,にわかづくりのダンボール小屋のような判決というのが率直な感想です。

 裁判長によるこのようなでたらめな判決がまかり通り無罪判決が出たのも,事件番号が平成2年という当時の社会状況に照らし,無理からぬものがあるかとも思うのですが,この濱田武律裁判長の後任となった被告発人小島裕史裁判長にも似たような傾向,奢りがあると強く感じました。

 この「名古屋高等裁判所金沢支部 平成2年(う)27号 判決 - 大判例」というネット上の情報を昨日,見つけたたのは,神原元弁護士,自由法曹団常任幹事,梨木作次郎弁護士というリレーのような流れがありました。

 上記の引用部分は「(1) H証言自体に内在する問題点について」です。おそらく5分か長くて10分程度の時間の出来事を吟味,評価するのにこれだけの記述を判決文に割いているのだと思いますが,前に読んだ,珠洲市の保険金目的母親殺害事件で無期懲役の判決文より記載が多そうです。

 この逆転無罪判決を,勝ち取ったというのか大手柄をたてたというか,その立役者が梨木作次郎弁護士で,同じ珠洲市の蛸島事件でも金沢地方裁判所七尾支部で殺人事件の無罪判決を出させています。石川県奥能登でおきた蛸島学童殺人事件裁判記録という本の記録が残されています。

 この濱田武律裁判長の控訴審逆転無罪判決ですが,金沢市内の神田陸橋付近を,「Hが最初に被告人から襲われたと供述する前記「ナカヤビル」前の点付近は、街灯やビルの玄関灯などで相当に明るく、」とし,

 さらに「しかも同ビルは住宅兼用建物でもあったということで、そもそも通行中の女性にわいせつ行為に及ぼうとして襲いかかる場所として相応しいところとは思えず、」と続けています。

 車で通行することしかなかった場所ですが,昭和63年12月当時に,そのような「街灯やビルの玄関灯などで相当に明るく」という場所であったとは思えず,疑問です。

 この判決文では「金沢市〈番地略〉先の主要地方道金沢・美川・小松線の上り線側道の路上において」となっていますが,神田陸橋とあるので,野田専光寺線に間違いはないと思います。現在はどうかわからいませんが,それが通常の道路名で,ラジオの交通情報にもありました。

 昭和58年当時ですが,増泉方面から来て神田陸橋の手前に右に入る道路がありました。信号機はあったように思います。右に入ると道路が右斜めに折れるのですが,ちょうどその角の辺りに小さな消防署がありました。

 右斜めに折れたまま直進すると,間もなく北陸本線だと思いますが,その下をくぐるガードがありました。かなり低いガードであったように思います。対向車のすれ違いができないほど道幅が狭かったような気もするのですが,裏道でありながら交通量の少ない道路でした。

 30年以上前の記憶のままなので多少違っている点もあるかもしれないですが,ガード下をくぐると一直線の道路で,右側は住宅が散在し,左側はほとんど田んぼだったように思います。見通しが良かったですが,次の大通りに出る手前,右手に極真空手の道場がありました。

 被告発人大網健二が金沢高校の高校生の時,通っていたとも聞いた極真空手の道場です。その先の大通りの交差点は,向かい側の左手にカーチェイスという車屋があり,昭和63年だと北安江の新店舗に移転していたかもしれません。

 同じく右手には「なんだかんだ」というお好み焼き店がありました。昭和63年の1月に,金沢市場輸送の輪島の社員運転手MYと一緒に食事をし,それから福島方面に向けて一緒に出発したと記憶にあります。

 濱田武律裁判長の判決文には,犯行現場の地理的説明が細かく出てくるのですが,ガード下というのもあります。ページ内検索で47件となっています。

 神田陸橋に歩道はなかったと思うのですが,車道より下に歩道があったのかと当初は想像していました。北陸本線の線路は近くで見ていますが,近くに踏切はなかったと思います。また,昭和63年当時であれば,付近の住宅はまばらだったと思います。

 少し思い出したのですが,増泉方面からから来て神田陸橋を渡ると,左手にマクドナルドのハンバーガー店があったように思います。商業ビルのようなものは記憶にないのですが,向かい側に昨夜記述した家電店がありました。

- 神田 - Google マップ https://t.co/DUSrxwOWtu

 Googleマップでみると,北陸本線を境に神田と新神田がはっきり線引きされています。航空写真に切り替えると,画質や道路がくっきりきれいすぎて,模型の町並みを見ているようです。

 県道25号線ともなっていますが,野田専光寺線は,Googleマップで西インター大通りとなっているようです。

- クリアコーポレーション - Google マップ https://t.co/KG7GGWdvrX

 上記のクリアコーポレーションとある場所が,昭和63年1月当時,「なんだかんだ」というお好み焼き店があった場所になると思います。前の道路が「まめだ大通り」となっていますが,東力2丁目のアパートから金沢市場輸送への通勤にほとんど使う道路でした。

 神田の消防署のすぐ近くには2つ年上の先輩が,私より3つ年下の少女と同棲するアパートがあって,昭和58年当時にはちょくちょく遊びに行っていました。その近くに,昭和59年の秋,被告発人安田敏と遊びに行ったアパートがあり,被告発人安田敏の珠洲市の友人2組が住んでいました。

 また,濱田武律裁判長の判決文に,被害者の24歳の女性は,アルバイトをする片町のスナックから歩いて神田陸橋に来たとありましたが,徒歩で40分とあり,そんなに時間がかかるものかと思いました。

- 片町 から 神田 - Google マップ https://t.co/AdWiesx9Oe

 経路を調べると,徒歩で21分,1.7kmとあります。裁判所が検証を行ったとは考えにくいので,梨木作次郎弁護士らの主張なのではと思われます。あるいは警察の供述調書にそうあるのかもしれません。

- 〈〈〈 2021/05/14 09:59:20 Linux Emacs: 〈〈〈

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